金縛り
金縛りって、子供でもなるんだろうか。
物心ついたときには、寝てるとき体が動かない現象がよくあった。
それが、夜寝てる時〜明け方くらいに決まって起こって、昼寝の時にはなんない。
大人に近づくにつれ、頻度は減ったけれど、ただ体が動かないだけではなく、
「誰かがくる」「誰かに体を乗っ取られそうになる」感じが大きくなってきている。
決まって大きな耳なりがして、それが両耳から脳へ入ってこようとする。
耳鳴りは、「キーーーーン」だったり、女性の叫び声だったり、複数の赤ちゃんが泣いていたりする。
無理やり起きて、意識を奮い立たせてひとしきり下衆い下ネタを含んだ罵詈雑言で追っ払う。
霊的なものかは知らんけど、疲れててもなるっていうし、登山家なんかよく幻覚見てるし、その一種なのかなって。
金属音とか、女性、赤ちゃんの鳴き声っていうのは、金縛りで世界共通であるみたいって何かで読んだので、
それならまあ、人間のDNAに刻み込まれた何かが反応したんですかねってなってて。特にお祓い経験とかはなし。
ちょっと怖かったのは、ある雨の晩に、ふと目が覚めて。
時計を見たら、4時くらい。じゃああと2時間は眠れるなって確認して、まだ外も暗いし雨降ってるなーって思って、また寝るかーってなった時。
「〇〇ちゃーん」って、アパートの外の通り(二車線くらいの道路がアパートの横にある)で誰かが言っているのが聞こえた。
中年女性の声っぽい。
猫がいなくなって、探してるんかなーってぼんやり思った。私もペットがいなくなって、雨の晩だったらやっぱり心配になるから。
外の音に耳をすませていると、女性は「〇〇ちゃーん」って言いながら、通りをアパートの方に近づいてくる。
肝心の〇〇の部分がよく聞こえなくて、名前なんなんだろうな、って思った。その女性がアパートの横を通り過ぎるときにわかるかな、って思った次の瞬間
「(私の名前)ちゃーん」
はあああ??って思った瞬間、強烈な金縛り。ミリも動かん。
あ、やばい。これはやばいぞ。私目当てかい。冷静に考えたら雨降ってる朝方の4時に声出してペット探す人そうそうおらんやろ、とか真面目に考えてた。
私を呼ぶ声がどんどんデカくなってくる。つまりアパートに近づいて来ている。
外階段から、カン・・・カン・・とゆっくり人が登ってくる足音がする。
このボロアパート、ぼろすぎて私しか住んでないので、私に用ある人しか登って来ないんだよなあ。こんな時間に登ってくるのは、やばいんだよなあ。
多分、女が玄関先に辿り着くかつかないかのときにやっと金縛りが解けて、ことなきを得た。
しばらくは寝床で怒ってたんだけど、後で一応玄関の鍵を確認しに行った(閉まってた)。
あれはちょっとやばかったなあ。